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艦名に文化を探る


(一周年記念兼二万hits謝恩特別連載)

序  章

 富士八島敷島朝日初瀬三笠

 日露戦争に参加した6隻の戦艦の艦名である.うち、富士と三笠は山の名前である.初瀬は河川名.八島と敷島は日本の異称である.そして、朝日は昇る太陽.この6隻に共通点はあるのだろうか.

 富士山は日本の最高峰であり、Fujiyama, Geishaと言う言葉は海外でも知られている。日本の象徴であり、主力艦の艦名に採用されたのは当然のことであると思える。対する三笠山。毎年一月の山焼きで知られる奈良の若草山の別名である。しかし、標高わずか342メートル、富士山の十分の一以下しかないこの山を地図帳から見つけるのは難しい。まして、海外で艦名の研究をしている人が、自国の地図帳からMt. MikasaあるいはMt. Wakakusaの名前を見出すのは、もっと困難であろう。イギリス人なら、これはmountainではなくhillと言ったかも知れないほどの低い山である。初瀬川にしても、ご存知の方は少ないと思う。奈良県から大阪湾に注ぐ大和川の支流であるが、大きな川ではない。もう一つの大和川の支流、龍田川とともに、細密な地図帳でないと載っていないと思う。Hatsuse riverと書かれた地図を見出すのは、さらに難しいだろう。朝日のみは地名ではないが、昇る日は日本の象徴である。もっとも朝日を旭日ととらずに、宇治の朝日山とする説もある。これだと、標高わずか124メートル、載っている地図帳を捜す方が難しいのではと思う。

 富士、朝日は日本の象徴、八島、敷島は日本の別名。明治日本の新軍艦として、アジア最大最強の戦艦として実にふさわしい艦名であろう。対して、初瀬、三笠の場合はどうであろう。日本の別号としては、扶桑はすでに使われているが、地図帳から発見するのも難しい地名が選ばれているのはどうしたことだろう。つける艦名がなくなったわけではない。扶桑や秋津洲はすでに使われているが、日本の別号としては瑞穂や葦原などというのも残っているのだから。

 さらに不思議なことがある。日本の駆逐艦の艦名である。朝露、朝霧、朝霜など、実にはかないものが艦名に選ばれている。陽炎、夕暮、霞などもそうである。嵐であるとか、吹雪であるとか、雷とか言うのは分かる。実際、他の国でも使われている艦名であり、奇異とするに当たらない。Jane海軍年鑑の日本海軍のページに、この駆逐艦の艦名の英訳がつけられていた時期がある。morning dew, morning mist, morning frostなどと言う英訳を、異国の人たちはどう言う気持ちで眺めたのだろう。日本の駆逐艦のファンの中には、その強そうにもない艦名にがっかりした人もいるのではないだろうか。

 「憂かりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを」、「天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも」
百人一首に収められたこれらの歌をご存知であろうか。実は、日本艦の艦名は和歌に由来するものが非常に多いのである。

(続く)


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