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#412

猫年である.

今年はでしょと言われそうだが、ヴェト=ナム(ベトナム)では猫である.

実際、ヴェト=ナム語版のWikipediaで卯年を調べると、の絵とともに猫の写真が出てくる.

こういう切手も出ている.

以前、ヴェト=ナム人に日本では年ですと言ったら、意外そうにされたので、猫オンリーかもしれない.

十二支に登場する生き物、生肖は国によって異なる.

たとえば、インドで酉はガルーダであり、はアラビアでは、イランではである.

日本でも、亥はとなっているが、本来は豚である.

また、中国では羊と山羊を区別しないので、未もどちらでもよいとなる.

このため、タイでは山羊であり、山羊に馴染みのなかった日本では羊となる.

ヴェト=ナムも未は山羊であるが、丑は牛ではなく水牛であり、卯は猫なのである.

タイも猫だと聞いたことがあるので、タイ人に聞いたことがあるが、否定された.

実際、タイ語のWikipediaで卯年を調べてもヴェト=ナムとグルン族の干支ではと猫がひっくり返っているとあるばかりである.

グルンはネパールの山岳民族である.

してみると、昔はそうだったからかもしれないし、ヴェト=ナムに近い所だけがそうなっているのかもしれない.

そして、ヴェト=ナムで猫はmeoというが、これは卯の中国語の発音maoと似ているから卯が猫になったといわれる.

ヴェト=ナムは漢字文化圏であったのである.

2023.1/1

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#413

ヴェト=ナムという国名自体が中国から与えられた越南に由来するし、ありがとうを意味するカモンは感恩、こんにちはを意味するシンチャオは慎謝である.

もっとも、フランス植民地時代にアルファベットを持ち込み、そちらが普及しているので、もとが漢字であると思う人は少ない.

その上、中国とは戦争をしあったこともあって、そういう話もあまり伝わっていないようである.

ただ、正月飾りに漢字の書かれた飾りをつける風習があり、幸福を祈る人は福、長寿を願う人は寿とか、金文字で書かれた物を買うそうである.

もっとも、漢字が分かるヴェト=ナム人が少ないので、店の人に願いを伝えてそれ用のものを買うのだそうだ.

また、ヴェト=ナムの貨幣単位であるドンは銅に由来するが、これは日本から輸入した銅で硬貨を作ったことによるという.

中国が紙幣経済に移行したため、日本に頼った結果だそうだが、寛永通宝が見つかったこともあるそうだ.

このためかどうかは知らないが、ドンは中国語では盾と書く.

ドンはdong、盾は中国語でdung、銅はtongなので、発音重視なのかと思うが、インドネシアのルピアも盾である.

オランダのギルダー、オーストリア・ハンガリーのグルデンも盾で表されており、これらに盾状の硬貨があったとは聞かない.

発音が近いからとも思えない.

それでも、ヴェト=ナムで卯が猫であるのは、漢字の音が近いからというのは説得力のある説であるように思う.

しかし、悩ましいのは卯が猫なのはヴェト=ナムだけではないということである.

2023.1/2

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#414

Wikipediaには「フランス中国の一部、チベット、タイ、ベトナム、ベラルーシではではなく猫が割り当てられる」と書いてある.

最後のベラルーシは、ロシアのウクライナ侵攻を支持する唯一の国として有名になっているが、白ロシアとかベロルシアと呼ばれていた地域である.

首都はミンスクというと反応する人も多いと思う.

ロシアとポーランドの間にある国である.

そのような所になぜと思われる方も多いかもしれないが、十二支はアジアだけでなく、中国に接する東ヨーロッパや中東にも広がっている.

ゲルマン民族の大移動の原因となったフン族は匈奴との関連性が噂されるようにアジア系だからである.

それはともかくとして、год кота(猫年)とベラルーシ語で画像検索してみると猫とが並んだ写真がたくさん出てくる.

長い耳を持った猫の写真もある.

つまり、かの国では猫とが鎬を削っているらしい.

いや、共存しているらしい.

これに対して、フランスのそれはヴェト=ナム人が持ち込んだものであろう.

2023.1/3

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#415

中国の影響がヨーロッパまで拡がったといっても、さすがに西ヨーロッパまでは拡がっていない.

したがって、フランスの場合、かつての植民地であったヴェト=ナムから持ち込まれたものであろう.

茶を意味する各国語は、広東語系統のチャ系統と福建語系統のテー系統に分かれる.

中国近辺と陸路で行ける範囲、アジア、中東、東ヨーロッパでは、茶はチャ系統の音で呼ばれる.

ロシア語、トルコ語のチャイ、アラビア語、カザフ語のシャイ、ヒンディー語のチャーヤはこの系統である.

西ヨーロッパではテー系統である.

英語、ラテン語、ノルウェー語等のティー、スペイン語、フランス語、イタリア語等のテ、ドイツ語、オランダ語のテー等である.

これらは、最初にヨーロッパに茶を持ち込んだオランダ東インド会社が福建語の名称で持ち込んだからである.

当然、海路であり、経由地のインドネシア、スリ・ランカ、マダガスカル等ではテー系統の発音である.

ところが、ポルトガルだけはチャである.

マカオ広東省にあったからという説と、日本から輸入したからというものがあるが、おそらくは前者であろう.

同様に、フランスの場合、かつての植民地であったヴェト=ナムから十二支が持ち込まれたと考えるべきなのである.

もっとも、Wikipediaにはヴェト=ナムの干支ではが猫に変化したと書いてあるので、フランス人が普段から十二支を使っているわけではないであろう.

これはl'annee du chat(猫年)とフランス語で画像検索してもほとんど出てこないことでも確かめられる.

2023.1/4

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#416

中国の一部、チベット、タイ、ベトナム」というのは近接している.

したがって、が猫に変わったとすれば、この辺りが発生地であろう.

もっとも、#412に述べたように現在では認められないというケースもあるとは思う.

その場合でも、ここに記載されているのだから、過去にはあったのかもしれない.

しかし、ベラルーシの場合、それでは説明できない.

中国の一部、チベット、タイ、ベトナム」とは隔絶した地域だからである.

つまり、中国文化圏の両端で同じ現象が起きているわけである.

これが偶然だと思えないのは、十二支に登場する動物はほとんど一致していて、地域による差が少ないからである.

おそらく、違う伝承が生まれても、後から来た中国人が是正するからであろう.

ただ、#412に述べたように、インドで酉はガルーダであり、はアラビアでは、イランではであるというのは分かる.

酉は鶏というのが一般的だが、桃太郎の従者は猿、雉子、犬であるという話は#371に書いた.

つまり、申酉戌という西方金気を意味する方位に由来するという話であるが、雉子であっても、鶏ではない.

であれば何でもよかったのだと考えれば、ガルーダでもよいことになる.

まして、であり、空想の生き物である.

しかも、東洋のが霊獣であるのに対して、西洋のドラゴンは邪悪な存在である.

ドラゴンは同一視できないものである.

にもかかわらず、であると言われたら、だとか、だとか、恐ろしいもの、巨大なものを想起しても不思議はない.

が存在しない地域もあると思うからである.

しかし、は違う.

2024.1/5

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#417

は世界中にいる.

オーストラリアやマダガスカルにはいなかったそうだが、持ち込まれた結果、普通に生息している.

基本的には平原の生き物だが、山岳地帯にもいる.

ツンドラ地帯やジャングルは無理だが、それら以外は大丈夫である.

大草原地帯であるベラルーシにもいる.

したがって、ベラルーシのみが猫年であるのは、が知られていなかったなどという理由ではない.

そこで思いつくのはブルガリアの猫年である.

ちょっと待った.

ブルガリアに猫年があるなどと書いていたかと聞かれそうである.

であるが、私が書いたのはが猫になるのはである.

ブルガリアの場合、が猫になるのである.

ただ、година на котката(猫年)とブルガリア語で画像検索しても見つからない.

これにтигъра()を足しても同様である.

ブルガリア語で検索を重ねてもと訳したはあっても、猫とした例は見つからないのである.

ところが、година на коткатаにзаека()という語を足して画像検索してみると幾つかヒットする.

たとえば、このサイトのタイトルには2018年、年のと猫のシンボルとはとある.

2018年は戌年であるが、このページは中国式占星術の紹介であろう.

このため、卯年生まれのシンボルである猫()についてとなっているようである.

ベラルーシと同じく、卯のシンボルは猫であったが、が正しいようだということで混乱が生じ、より猫に似たがそうなったのかもしれない.

十二支の残滓のような物が残っているのであろう.

しかし、ブルガリアにおいても卯はまたは猫が生肖として使われていたのなら、ベラルーシと並んで中華文化圏の両端で同様なことが起こっていることになる.

2023.1/6

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#418

方言周圏論というものがある.

方言は昔の言葉であり、辺境にこそ残りやすいという考えである.

たとえば、蛇のことを「くちなわ」という地域があるが、これは「枕草子」に「くちなはいちご」として登場する.

「くちなはいちご」とは蛇苺である.

この「くちなは」は、口+縄ではなく、朽ち縄が語源だそうだが、「ずつない」という言い方もそうである.

頭が痛いの意味にも使うので頭痛が関連するのかと思っていたが、これは「術なし」、直す方法がないであり、これも「枕草子」に登場する.

言葉が残るのなら、文化も残る.

昔の風俗・風習が地方に残っているのは珍しいことではない.

したがって、になる前の卯年の猫が残っていても不思議はない.

実際、湖北省で1975年に見つかった秦代の竹簡の中に書かれた生肖は現代の物と異なっている.

午が鹿、未が馬、戌が老羊となっており、犬がいない.

他は同一であり、卯もであるが、紀元前2世紀の中国ではまだ十二支の生肖は固まっていなかったのである.

したがって、卯が猫であるというのもあったのかも知れない.

「礼記」郊特牲篇に「迎猫、為其食田鼠也(猫を迎ふるは、其れに田鼠を食はしむるが為なり)」とあるからである.

2023.1/7

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#419

「礼記(らいき)」は四書五経の一つで儒教の根本経典である.

周代以降の礼に関する記述を前漢の戴聖がまとめたものとされる.

前漢は紀元前206年に劉邦が建て、同8年に滅んでいるから2000年以上前の本である.

「猫を迎ふるは、其れに田鼠を食はしむるが為なり」とは、猫は田の鼠を食ってくれるので祭に迎え入れるの意味である.

ただし、ここの猫という漢字は獣偏ではなく、貉偏である.

このため、これは猫ではなく、山猫だと書いてあるものもある.

「迎猫、為其食田鼠也」の後に「迎、為其食田亥也(を迎ふるは、其れに田亥を食はしむるが為なり)」、田に出てくる猪を防ぐからとあるので余計である.

ただ、中国では貉偏のほうが正字である.

もっとも、中国で猫がペットとして飼われているのが確認できるのは唐代である.

実際、「窮鼠猫を噛む」は前漢の「塩鉄論」が出典だが、そこでは猫が狸になっている.

そして、#187に書いたように、中国では狸は山猫のことである.

また、中国陝西省全湖村で、長年、穀類を与えられた痕跡のある猫の骨が5300年前の遺跡から見つかっているが、これも山猫のようである.

実際、周代において鼠を捕らえる動物とされたのは犬であり、後に山猫となる.

逆にいえば、この時代、猫がいなかったとなるが、現在の家猫の祖先はリビア山猫とされる.

中国の猫もそうであったかどうか分からない.

ただ、5300年前の遺跡から見つかった山猫は人間の手から長年に渡って穀類を与えられ、主人の近くに葬られているのである.

猫と山猫が生物学上異なっているのは確かであっても、十二支ができた時代の中国に猫らしいものがいたのである.

であるのに、十二支の生肖に猫が選ばれなかったのはなぜかとなる.

2023.1/8

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#420

山猫であるのなら、と同一視されたという考え方もできるし、一般に膾炙した動物ではなかったという考え方もできる.

しかし、十二支の生肖として猫が選ばれたものもあったが、長い年月の間に忘れ去られたという考え方もできるのである.

ヴェト=ナムやベラルーシの場合はその名残であると考えるわけである.

もちろん、偶然であるとか、ベラルーシにもヴェト=ナムから伝わったという考え方もできよう.

しかし、ベラルーシとブルガリアはともに東ヨーロッパの国であるが、国境を接しているわけではない.

また、ベラルーシの場合、ロシアやポーランドと同じくフランスの強い影響を受けていても不思議はないだろうが、ブルガリアの場合はそうでもないであろう.

まして、ヴェト=ナムと強い関係があるとは思えない.

つまり、ヴェト=ナムから伝わったとはとても思えないし、中国文化圏に接する3ヶ国で同様の現象が起きているというのは、偶然とは思えない.

もちろん、中国に卯の生肖として猫があったことが証明できればいいのだが、なかなか都合のいい文献がない.

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#421

ただ、南方熊楠の「十二支考」ののところの最初のほうに「北京辺で山兎、野兎また野猫児と呼ぶとあった」とある.

野猫児とは野良猫のことである.

つまり、北京付近では野兎を野良猫と呼んでいたというわけである.

しかし、熊楠は兎が猫の子というのは面妖であると思ったのであろう、その後に「ノルウェーは雪を潜って鼬鼠(はつかねずみ)を追い食う」と続く.

その出典に1876年版サウシ「随得手録(コンモンプレース・ブック)」3とあるので、サウジーRobert Southeyの随想録Southey's Common-place bookである.

その495に"Hares in norway catch mice, and pursue them under the snow"とある.

なるほど、「ノルウェーは鼠を捕まえ、雪の下を追いかける」である.

ノルウェーは気が荒いのかなと思うが、続いて"Whether our own likewise catch field mice, and are thence called Puss, we submit to our sportsman"とある.

同様に我々が野鼠を捕まえたらPussと呼ばれるのかだが、Pussは「猫ちゃん」のようなニュアンスの語である.

したがって、ノルウェーは猫のようなものであるとなる.

これは活動的な野兎にしても奇妙である.

これらも関連があると考えると、中国にもその痕跡があり、範囲も北欧まで拡がるわけである.

もっとも、今年を猫年とするのは現在ではヴェト=ナムだけである.

しかも、かの国は旧暦で考えているので、今年の正月一日は今月22日である.

したがって、今はまだ年であり、来年のことを考えても仕方がないのである.

よいお年をお迎え下さい.

2023.1/9

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日本では卯を「うさぎ」と読むが、中国では鼠年、牛年、虎年、年というように動物名の漢字を使う.

これは、漢字の発音は原則1種類で、日本のような訓の存在を認めていないことによる.

というのは、十二支は十二生肖だけではなく、十二時辰と呼ばれる時刻、方位や

子丑寅卯…は本来植物の状態を表す文字だったからということもある.

亥は核(種)、子は孳(ふ)える、丑は紐、寅は虫+寅で動く、卯は双葉という

子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の十二支の漢字を生肖で呼ぶことはしない.


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